2069日目・・・ココの天気・・・空は薄曇りで覆われ、雲が千切れての切れ目も無く、その雲を通して太陽は銀色に輝き、風は強風の一日だった・・・夜は結構、寒い・・・廃材を貰って造った物置小屋の中を整理し、薪に使用しようと思っていた枯れ木や、段ボール箱を千切って積んでいたモノをガレージに移し、茣蓙を床に敷いて、戸棚に拾った茶碗を並べ、茶室風にアレンジし、椅子を運び込んで、暫くボンヤリと座り込み、自己満足の悦に浸っていたが・・・子供の頃の「夢」が、今現在、実現したんだな、と、思ってみたりもした・・・

 小学四、五年生の頃、山の高台にある職員住宅に伯父さん夫婦と同居していたが、その高台住宅はA地区、B地区、C地区、D地区と山裾の沢で区切られ、山の中腹に建ち並んでいた。住んでいたA地区はズリ山(炭鉱坑内から出る岩石などの部分を捨石=ぼた石、俗称でズリ、この岩石などをトロッコを用いて長年積み上げられ、できた山)の道と繋がって会社の現場に通じている近道になっていた。そのズリ捨て山の道からは小学校、中学校、商店街、対面の山の中腹の寺、神社、山裾を走る鉄道と汽車が走る全貌が見渡せ、際立った崖の下には真っ黒な炭川が流れていた・・・伯父さんも、オフクロも、春夏秋冬、豪雨の日も、吹雪の日も、通勤にその道をテクテクと・・・子供のボクたちにとっては、凸凹のズリ捨て山は恰好の遊び場だった・・・
 そのズリ捨て道の更に上には貯水池、そして山の持ち主であるご夫婦と男女二人の子供が住んでいて斜面の畑にはイチゴを栽培していた。その男の子とは友だちで、遊びに行く目的はイチゴとグスベリ、そして木苺・・・だが、危険が伴う、覚悟の場所でもあった。飼っている牡羊が追いかけて、頭の角で突いてくる。そして、馬が駆け寄って迫ってくるコトだった・・・逃げ回って下駄の鼻緒が切れ、転んで足首を挫いた・・・
 A地区の子供仲間で向こうの山を超えた焼山へカジカをとりに行こうと云う。足を挫いていたボクには無理だったが「A君」が歩けるところまでは肩を貸し、歩けなくなったら負ぶってくれると云う・・・「A君」とは小学一、二年生の頃は取っ組み合いの喧嘩の宿敵だったが、その頃には仲良し・・・最初は助けも受けずに痛みをコラエてついていくコトにしたが、帰りは「A君の肩」に頼らならざるを得なかった・・・その後は足はパンパンに青く膨れ上がった・・・
 A地区とB地区の間は谷の沢になっており、そこは同時に高台の家庭で燃やした石炭の灰やゴミ捨て場になっていた。
 斜面の空間には畑なども作っている場所もあり、その作り手は高台の下に住む労働者の家族であった。
 隠れ家・・・小屋造り・・・暑い夏休み、一級上の「Mちゃん」とその住宅横の谷間の斜面の土をスコップでL状に削り、平面した場所の上に小屋を造ろうと計画。ご近所に積まれてあった廃材を運び込み、小屋を造り始めたが、結局、中断。材料不足と云うか、危ないからヤメロと注意された結果なのか・・・記憶は曖昧である・・・その後も、伯父さんの造った物置小屋の側に何度も小さい小屋を造ったり、気に喰わなくて、壊したり、又、造ったりの連続・・・小屋の中でナニをするつもりだったんだか・・・ただ、狭い空間に茣蓙を敷いて寝転んだだけ・・・
 ・・・子供の頃の想い出を曖昧にボンヤリと・・・物置小屋の椅子の上で・・・